大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)55号 判決

先づ職権をもつて原審の訴訟手続の当否について審査する。本件記録によれば、次の経過事実が認められる。

原審において控訴人は昭和三十八年十二月三日附をもつて、被控訴人の主張に対し、本件各手形振出の事実のみを認め、その余を否認する旨記載した答弁書を提出したが、同年十二月三日午後一時の原審第一回口頭弁論期日に出頭しなかつたので、右答弁書は陳述したものとみなされ、被控訴人は証拠として甲第一号証ないし同第四号証の各一、二を提出し、即日弁論の終結がなされた。原審は、昭和三十九年一月二十三日「控訴人は適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面の提出しない」との事実を摘示し、「控訴人は、被控訴人の主張事実を明かに争わないところであるから民事訴訟法第百四十条に従い、これを自白したものとみなす、そしてその事実に基く被控訴人の請求は正当である」と判断し、被控訴人の請求を認容する旨の判決を言渡した。次で原審は昭和三十九年一月十三日決定をもつて、原判決の上記部分を、「控訴人が提出した昭和三十八年十二月三日附答弁書を陳述したものとみなし、かつ被控訴人は証拠として甲第一ないし同第四号証を提出した。と加え、被控訴人主張の(一)の事実は控訴人の自白したところであり、二、三の事実は弁論の全趣旨により成立したものと認める甲第一ないし同第四号証の各一、二の記載によりこれを認める」と更正した。

上記原審のなした経過に徴すれば、控訴人は陳述を擬制された答弁書によつて、被控訴人の主張事実中、手形振出の点を除くその余の事実を争つていたにかゝわらず、原審はこれを看過し、控訴人は答弁書を提出しないものとし、民事訴訟法第百四十条第一項第三項に従い被控訴人の主張事実を自白したものとみなして、判決をなしたところ、その後右答弁書の提出及び陳述の擬制に気付き、当事者間に争のある事実を証拠によつて認定し、被控訴人の請求を認容する旨、判断の変更をなしたものであることが明かである。従つて、原判決には裁判所の認識と判断そのものに誤謬があつたもので、その認識と表示に不一致のある場合に該当しないのであるから、その誤りが記録上明かな場合であつても、一たん判決の言渡がなされた以上、後日前記法条による更正決定手続によつてこれを変更することは許されないものと解しなければならない。

従つて、原審のなした判決の更正は違法であり、原判決はこれを維持することができないから、原判決を取り消して、当審においてさらに判決をなすべきものとする。

(村松 杉山 菅本)

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